夏の空調では、室温28℃前後・湿度60%以下がひとつの目安として推奨されています。
ただし、これは「エアコンを必ず28℃に設定する」という意味ではありません。実際の室温・湿度や外気温、日当たり、体調などを確認しながら、無理のない範囲で調整することが重要です。環境省も、28℃はエアコンの設定温度ではなく「室温」の目安として扱ってきました。
夏の空調は28℃・60%が推奨?まず結論を整理
「夏のエアコンは28℃がいい」「湿度は60%以下にしたほうがいい」と聞いたことがある方は多いのではないでしょうか。
結論からいうと、室温28℃前後・湿度60%以下は、夏の室内環境を考えるうえで分かりやすいスタート地点です。ただし、この2つの数字には少し異なる背景があります。
東京都の「健康・快適居住環境の指針」では、冷房時の室温について25~28℃を目安とし、湿度については40~60%を目安としています。特に湿度は60%以下に保つよう案内されています。
一方、環境省が2005年(平成17年)のクールビズ開始時に示した「28℃」は、冷房の設定温度ではなく、冷房時の室温の目安でした。
さらに重要なのは、現在の環境省のクールビズでは、一律に「室温を28℃にしてください」と呼びかけているわけではないことです。現在は、その日の気温や仕事環境、体調などに応じて適正な空調を使うという考え方が重視されています。
整理すると、次のように考えると分かりやすいでしょう。
| 項目 | 夏の目安 | 数字の考え方 |
|---|---|---|
| 室温 | 28℃前後 | 28℃は設定温度ではなく室温を見る |
| 湿度 | 60%以下を意識 | 40~60%程度を管理の目安にする |
| エアコン設定温度 | 一律ではない | 実際の室温を見ながら上下させる |
| 暑い・体調が悪い場合 | 数字に固執しない | より涼しい環境を優先する |
厚生労働省の建築物環境衛生管理基準では、一定の建築物における空気環境について、温度18~28℃、相対湿度40~70%という基準も示されています。ただし、この基準をそのまま一般家庭のエアコン設定値と考えるのは適切ではありません。
実際、厚生労働省も、外気導入機能のない家庭用ルームエアコンは、この基準でいう「空気調和設備」や「機械換気設備」には該当しないと説明しています。
つまり、「国がすべての家庭に28℃・60%を絶対条件として定めている」という理解ではなく、公的な住環境・熱中症対策を踏まえた、家庭で使いやすい管理目安として考えるのが適切です。
ここを理解しておくと、「28℃に設定したのに暑いけれど我慢しなければならないの?」という疑問も解消しやすくなります。
答えは、我慢する必要はありません。
28℃はエアコンの「設定温度」ではなく「室温」の目安

夏の空調で最も間違えやすいのが、28℃という数字をエアコンのリモコンに表示される設定温度だと思ってしまうことです。
環境省は、クールビズで使われてきた「室温28℃」について、設定温度ではないことを明確に説明しています。設定を28℃にしても、実際の部屋が必ず28℃になるとは限りません。
室内の温度は、外気温だけで決まるものではありません。
環境省は、外気温や湿度、西日などの立地条件、空調設備の種類、建物の状況、室内にいる人の体調なども考慮しながら、室温を管理する必要があるとしています。
例えば、エアコンを28℃に設定しているのに、温湿度計を見ると室温が30℃になっていたとします。
この場合、「推奨は28℃だから設定を下げてはいけない」と考える必要はありません。環境省も、設定温度を28℃にしても室温が28℃にならない場合には、設定温度を下げることも考えられると説明しています。
反対に、エアコンを26℃に設定していても、実際の室温が27~28℃程度で安定しており、暑さを感じず快適に過ごせているのであれば、「設定が26℃だから間違い」と単純に判断する必要もないでしょう。
見るべき数字はリモコンではなく、実際に人が過ごしている場所の室温です。
東京都の住環境に関する指針でも、温度計を使って実際の室温を確認することが勧められています。温度計は窓際やエアコンの吹き出し口付近を避け、できるだけ室内の平均的な温度を確認できる場所に置くことがポイントです。
これは意外に重要です。
エアコンの真下だけ涼しくても、家族が座っているソファ付近が暑ければ、その部屋を快適に管理できているとは言いにくいからです。
温湿度計を一つ置くだけでも、「なんとなく暑い」から「いま室温29℃、湿度67%だから調整しよう」という具体的な判断に変えられます。
湿度60%以下が目安なのはなぜ?40~60%を意識

夏の空調では、温度だけではなく湿度にも注目することが大切です。
東京都の「健康・快適居住環境の指針」では、室内の湿度について40~60%を目安とし、湿度が60%を超えるとカビやダニが発生しやすくなるため、60%以下に保つよう案内しています。
そのため、この記事では「湿度60%以下」を夏の空調管理の一つの分かりやすい目安としています。
ただし、ここでも「59%なら安全で、61%なら危険」という境界線として考える必要はありません。
湿度は常に多少変化するため、おおむね40~60%程度に収まっているかを見るくらいの感覚が実用的でしょう。
厚生労働省の建築物環境衛生管理基準では、一定の建築物について相対湿度40~70%という範囲が示されています。東京都の家庭向け住環境指針では、さらに生活上の目安として40~60%が示されています。
また、気象庁は熱中症について、気温だけでなく湿度が高い場合にもリスクが高くなると注意を呼びかけています。
ここが「28℃だけ見ていれば大丈夫」とはいえない理由です。
同じ28℃でも、湿度が低めで風がある部屋と、湿度が高く空気がよどんでいる部屋では、感じ方が変わります。
熱中症対策で使われる「暑さ指数(WBGT)」も、単純な気温だけで判断するものではなく、気温、湿度、日射などの要素から算出されます。環境省は、身近な場所のWBGTを確認して熱中症予防に役立てるよう呼びかけています。
そのため、夏場は「室温は28℃だから大丈夫」と考えるのではなく、温度と湿度をセットで確認する習慣をつけたほうが安心です。
梅雨時など、それほど室温が高くないのに湿度が高い場合は除湿を検討できます。一方、真夏のように温度も湿度も高い場合には、エアコンを使って室温を下げながら湿度も管理する方法が適しています。東京都の住環境指針でも、気温がそれほど高くなく湿度が高いときは除湿器、気温も湿度も高いときはエアコンを使う方法が紹介されています。
なお、「除湿運転なら必ず冷房より電気代が安い」とは限りません。
エアコンの除湿方式や機種によって動作が異なるため、電気代だけを理由に冷房と除湿のどちらかを一律に選ぶより、まずは実際の室温と湿度が適切な範囲になる運転方法を選ぶことをおすすめします。
夏の冷房を正しく使う7つのポイント

では実際に、夏の家庭ではどのようにエアコンを使えばよいのでしょうか。
重要なのは、「設定温度を何℃にするか」だけに集中しないことです。
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1.温湿度計で実際の室温と湿度を確認する
まず、室温28℃前後・湿度60%以下を一つの目安として、実際の状態を確認します。温度計や湿度計は、窓際やエアコンの吹き出し口を避け、普段人が過ごす場所に近い位置で確認すると判断しやすくなります。東京都も、室内の平均的な温度を確認できる場所への設置を案内しています。
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2.エアコンの設定温度ではなく室温を基準に調整する
リモコンが28℃でも、実際の室温が30℃なら設定を下げることを検討します。反対に、十分に涼しい場合は無理に冷やす必要はありません。環境省も28℃はあくまで室温の目安であり、外気温や湿度、建物の状況、体調を考慮するよう説明しています。
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3.扇風機やサーキュレーターで温度むらを減らす
エアコンを使っていても、部屋の場所によって暑さが違うことがあります。環境省は、扇風機やサーキュレーターを併用し、冷気を効率よく循環させる方法を紹介しています。
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4.カーテンやブラインドで日差しを抑える
夏の日差しが窓から入ると、室温が上がりやすくなります。東京都の住環境指針では、日差しの入る部屋でカーテンやブラインド、すだれなどを使い、日差しを遮る方法が案内されています。
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5.エアコンのフィルターを定期的に掃除する
毎日のようにエアコンを使用する時期は、フィルターの汚れも確認しましょう。東京都の指針では、日常的に使う時期は2週間に1回程度のエアフィルター清掃が案内されています。資源エネルギー庁も、フィルターを月1~2回清掃する省エネ対策を紹介しています。
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6.冷房中も必要な換気は続ける
エアコンを動かしているからといって、それだけで換気できているとは限りません。厚生労働省は、外気導入機能のない家庭用ルームエアコンについて、換気設備には該当しないと説明しています。東京都も住宅の24時間換気設備は常時運転するよう案内しています。
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7.夜も暑い日は無理にエアコンを切らない
「寝るときは節電のため必ず切る」と決めつけるのはおすすめできません。環境省は、夜間でもWBGTが高い場合、特に高齢者を中心に室内熱中症の危険が高くなるとして、暑さを我慢せず空調設備を使うことを推奨しています。
ここまでを見ると分かるように、正しい冷房の使い方は「設定を28℃にする」という一つの操作ではありません。
室温・湿度を測る、日差しを遮る、空気を循環させる、必要に応じて設定を変える。
こうした複数の対策を組み合わせるほうが、室内環境を安定させやすくなります。
28℃にこだわりすぎないことが熱中症対策では重要
夏の空調で特に注意したいのは、節電を優先するあまり暑さを我慢してしまうことです。
環境省の熱中症予防情報サイトでは、熱中症警戒アラートが発表された地域では、まず屋内でエアコンなどを適切に使用し、涼しい環境で過ごすよう呼びかけています。高齢者や子どもなどは特に注意が必要です。
暑さ指数(WBGT)が33に達すると予測される場合には、熱中症警戒アラートの対象となります。WBGTは気温だけではなく、湿度や日射なども考慮した指標です。
つまり、「今日は室温28℃だから大丈夫」と数字だけを見て安心するのも、「推奨が28℃だから暑くても我慢する」のも、どちらも適切とはいえません。
特に高齢者、子ども、持病のある方などがいる家庭では、数字よりも涼しい環境を確保することを優先したほうがよいでしょう。環境省も、こうした人は熱中症になりやすいとして、より注意するよう案内しています。
夜間も同様です。
外が暗くなると安心しがちですが、建物に日中の熱が残っていたり、夜になっても気温や湿度が高い状態が続いたりすることがあります。環境省は、夜間のWBGTが高い時期には室内でも熱中症の危険が高まるため、空調を積極的に利用することを勧めています。
また、2026年度の夏季の省エネルギーに関する政府の取組でも、冷房については健康を第一に、温度を柔軟に設定するという考え方が示されています。
省エネは大切ですが、健康を損なってまで設定温度を上げるものではありません。
まず安全な室内環境を作り、そのうえでフィルター清掃や日射対策、空気の循環など、身体に無理のかからない方法で省エネを考える。この順番が大切です。
筆者の考察|「28℃・60%」より大切なのは実測値を見ること
ここからは筆者の考えです。
夏の空調について調べていて特に重要だと感じるのは、「設定値」と「実測値」を分けて考えることです。
私はシステムエンジニアとして仕事をしていますが、システムの管理でも「設定した数値」と「実際に動いている状態」は分けて確認します。
例えば、サーバーにある設定をしたからといって、その設定どおりの負荷や温度で動いているとは限りません。実際の状態を監視し、問題があれば設定を変更します。
家庭のエアコンにも、これと似た考え方が使えます。
リモコンに「28℃」と表示されているのは設定値です。
一方で、本当に確認したいのは、人がいる場所の室温が何℃で、湿度が何%なのかという実測値です。
ここを逆にしてしまうと、「設定は28℃だから正しいはずなのに、なぜか暑い」という状態が起こります。
私は、夏の空調管理は次の3段階で考えると分かりやすいと思います。
第1段階は室温を見ること。
28℃前後をスタート地点として、暑ければ設定温度を下げます。
第2段階は湿度を見ること。
60%以下を意識し、40~60%程度に収まっているか確認します。
第3段階は人を見ること。
同じ温度と湿度でも、年齢や体調、活動量などによって感じ方は変わります。暑い、だるいなど身体の異変を感じる場合は、数字にこだわらず涼しい環境を優先すべきでしょう。
そして、もう一つ見落としたくないのが部屋ごとの違いです。
同じ家でも、西日が強い部屋、パソコンなどを長時間使う部屋、家族が集まるリビング、日当たりの少ない部屋では状況が違います。環境省も、日当たりや建物、空調設備などの条件によって室温が変わることを踏まえ、28℃を固定的な数字として扱わないよう説明しています。
そのため、「我が家のエアコンは何℃に設定するのが正解ですか?」という問いに、全国共通の一つの数字だけで答えるのは難しいと考えます。
むしろ、
「室温28℃前後・湿度60%以下を最初の目安にして、温湿度計と体感を見ながら調整する」
という考え方のほうが実生活では使いやすいでしょう。
28℃・60%は、守るためのルールではありません。
快適で安全な環境を作れているか確認するための基準点として使う数字だと考えると、夏の空調設定で迷いにくくなります。
まとめ|夏の空調は室温28℃前後・湿度60%以下を目安に調整
夏の空調では、室温28℃前後・湿度60%以下をひとつの目安として考えると分かりやすいでしょう。東京都の住環境指針では冷房時の室温25~28℃、湿度40~60%が目安として示されています。
ただし、28℃はエアコンの設定温度ではありません。
環境省がクールビズで示してきた28℃も室温の目安であり、現在のクールビズでは一律の室温設定を求めていません。外気温や湿度、日当たり、建物、体調などを考慮して調整することが大切です。
夏の冷房では、
「リモコンを何℃にするか」ではなく、「実際の部屋が何℃・何%になっているか」
を見る習慣をつけてみてください。
温湿度計で状態を確認し、必要に応じて設定温度を下げる、除湿する、日差しを遮る、空気を循環させるといった対策を組み合わせることで、より快適な室内環境を作りやすくなります。
そして何より、暑いと感じるときや熱中症の危険があるときは、28℃という数字にこだわって我慢しないことが大切です。
よくある質問
夏のエアコンは設定温度28℃が推奨ですか?
「エアコンの設定を28℃にする」という意味ではありません。
環境省が示してきた28℃は、冷房時の「室温」の目安です。設定を28℃にしても室温が高い場合は、設定温度を下げて調整することができます。
温湿度計を使い、人が実際に過ごしている場所の温度を確認するのがおすすめです。
夏の湿度は60%以下にしたほうがいいですか?
一つの目安として、湿度60%以下を意識するとよいでしょう。
東京都の住環境指針では、室内の湿度を40~60%程度にすることを目安とし、60%を超えるとカビやダニが発生しやすくなるとして60%以下に保つよう案内しています。
ただし、60%を一瞬超えただけで危険という意味ではありません。温湿度計を見ながら、継続的に高湿度にならないよう調整するとよいでしょう。
寝るときはエアコンを切ったほうがいいですか?
暑い夜に無理に切る必要はありません。
環境省は、夜間でも暑さ指数が高い場合には室内熱中症の危険性が高まるとして、暑さを我慢せず空調設備を積極的に使用するよう案内しています。
タイマーだけに頼らず、寝室の温度や湿度、体調を確認しながら調整することが大切です。


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